年金の家族手当!年下の配偶者がいるあなたは加給年金を受取れるかも!

「請求漏れは避けたい約39万円の上乗せ給付」
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企業の福利厚生に「家族手当」があるように、厚生年金にもいわば家族手当のように支給される「加給年金」があるのはご存じですか?この加給年金は対象となる配偶者や子がいる期間のみ支給されるので、ねんきん定期便の金額には含まれていません。そのため、加給年金の条件を満たしている方が受取れる年金額は、ご自身が思っているよりも多いかもしれません。
今回は、加給年金の対象となる家族の条件や支給金額について解説していきます。

加給年金とは

加給年金とは、原則として厚生年金に20年以上加入していた方が、65歳時点で生計を維持している配偶者や子がいるときに受取れる上乗せ給付のことです(配偶者・子の条件については【図表1】を参照)。65歳時点で加入期間が20年に満たない方は、20年に達した時点で条件を満たす配偶者・子がいるかを判定します。
加給年金額は毎年度見直されますが、例えば対象となる配偶者がいる方の令和4年度の加給年金額は388,900円(特別加算額165,100円含む)と結構まとまった金額です。

図表1|配偶者・子の条件

 
対象者 加給年金額 年齢制限
配偶者(※1) 223,800円(※2)65歳未満であること
(大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はありません)
1人目・2人目の子 各223,800円18歳到達年度の末日までの間の子
または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
3人目以降の子 各74,600円

※1 配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)を受け取る権利があるとき、または障害年金を受けられる間は配偶者加給年金額は支給停止されます。
※2 老齢厚生年金を受けている方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に33,100円から165,100円が特別加算されます。

(「加給年金額と振替加算」(日本年金機構)をもとにオンアド作成)

加給年金の申請が漏れている人もいる

年金を受取る際には、年金事務所に年金請求書を提出します。年金請求書には日本年金機構が管理している情報があらかじめ印字されていますが、今回取上げた加給年金の箇所については、年金を請求する方がすべて記入しなければなりません。もちろん、対象となる配偶者・子についての説明は年金請求書にも記載されていますが、「働いている配偶者は『生計を維持している』対象にならない」や、「健康保険制度の扶養認定基準(年間収入130万円未満)から外れているから対象にならない」といった思い込みで、請求漏れが生じているようです。

公的年金制度における「生計維持」の基準とは

公的年金制度における「生計維持」の基準が、収入要件において健康保険制度よりも幅が広いことは意外と知られていません。被扶養者の認定基準が、健康保険制度では年間収入130万円未満であるのに対して、公的年金制度では年間収入850万円未満(もしくは年間所得655万5千円未満)とかなり大きな違いがあります。
そのため、一般的には【図表2】(1)に記載している生計同一要件を満たす場合は、多くの方が加給年金の対象となるのです。
なお、収入要件に関しては、判定時点で基準を上回る収入があったとしても、勤務先の定年退職等によりおおむね5年以内に下回ることが合理的に判断できる場合(就業規則による確認等)は、要件を満たしていると判断される場合もあります。

図表2

  • 公的年金制度における生計維持の要件

    • (1)生計を同じくしていること
      (同居していること。別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族である等の事項があれば認められます。)
    • (2)収入要件を満たしていること
      (前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5千円未満であること。)

(「生計維持」(日本年金機構)をもとにオンアド作成)

配偶者が65歳になった際にもらえる可能性がある「振替加算」

前述のとおり、加給年金の対象となる配偶者には年齢要件があるため、配偶者が65歳になると支給は停止されます。この時に加給年金の対象であった配偶者が老齢基礎年金を受取る場合には、【図表3】の要件をすべて満たすと、配偶者自身の老齢基礎年金額に「振替加算」という給付が上乗せされます。この振替加算は要件を満たす限り、一生涯受取ることができます。【図表4】は、65歳時点で配偶者が62歳の方を例として、本人の加給年金の支給停止、配偶者の振替加算の支給開始のイメージを表しています。

図表3

  • 振替加算を受ける方の要件

    • (1)生年月日が「大正15年4月2日~昭和41年4月1日」の間であること
    • (2)ご本人が老齢基礎年金のほかに、老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、厚生年金保険と共済組合等の加入期間の合計が20年※1未満であること

※1 中高齢の資格期間の短縮の特例を受ける方は、厚生年金保険(一般)の被保険者期間が15~19年

< 振替加算を受ける方の生年月日 > < 加算額 >※2
大正15年4月2日 ~ 昭和2年4月1日
223,800円
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昭和31年4月2日 ~ 昭和32年4月1日
44,760円
昭和32年4月2日 ~ 昭和33年4月1日
38,717円
昭和33年4月2日 ~ 昭和34年4月1日
32,899円
昭和34年4月2日 ~ 昭和35年4月1日
26,856円
昭和35年4月2日 ~ 昭和36年4月1日
20,813円
昭和36年4月2日 ~ 昭和41年4月1日
14,995円

※2 振替加算の額は、大正15年4月2日から昭和2年4月1日生まれの方については配偶者加給年金と同額で、それ以降年齢が若くなるごとに減額されます。

(「老齢年金ガイド令和4年度版」(日本年金機構)をもとにオンアド作成)

図表4

まとめ

公的年金制度は、支給の対象となっていてもご自身で請求手続きを行わなければ年金を受取ることができません。今回取上げた加給年金は、対象の配偶者・子がいるだけで約39万円が年金額に上乗せされるわけですから、請求漏れは避けたいところです。用語や条件が複雑な公的年金制度ではありますが、お近くの年金事務所での対面相談や、日本年金機構の「ねんきんダイヤル」(電話相談)で気軽に相談することができます。多くの方にとってセカンドライフの収入の柱である公的年金。この機会に、ご自身が受取る年金額について確認されてみてはいかがでしょうか。

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本稿は2022年8月時点の情報に基づいて執筆しております。
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