債券・株式同時安での資産運用

~どんな局面でも慌てない運用を心掛ける~
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緊迫するウクライナ情勢、原油や食料の需給ひっ迫による物価急騰、世界同時で行われる金融引き締めの影響で、今年のマーケットは大きく混乱しています。債券・株式ともに下落しているこの状況で、不安になっていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

本稿では、こうした状況でも投資を始めて大丈夫なのか、どのように資産を守っていけばいいのかを、過去のマーケットを参考に解説していきます。

1970年代のオイルショックを参考にする

現在の世界経済の動きは、1970年代のオイルショックの際と似ている点が多くあります。当時は、原油高を発端とする物価上昇の影響から金利が上昇し、その後2度にわたり、景気が後退する中で物価が上昇する「スタグフレーション」が起こりました。特に、79年後半は債券・株式同時安の状況に陥り、世界のマーケットは大きく混乱していたのです。

 

【図表1】は、オイルショック前後における米国の金利・物価上昇率・GDP成長率の動向を表したものです。第1次オイルショック直後の74年は物価上昇率が10%を超えることもあり、FRBは物価抑制に取り組んだものの、十分な対策を取ることが出来ず、景気後退に陥ってしまいます。

 

しかし、その後の79年8月、後に「インフレファイター」と呼ばれるボルカー氏がFRB議長に就任したことで転機が訪れます。物価の急上昇を抑えるため、指標金利であるFF金利が一時22%を超えるほどの強烈な金融引き締め・利上げを断行したのです。GDP成長率がマイナスに陥り、失業率も10%近くまで上昇するなどの痛みも伴いましたが、結果的には物価上昇が落ち着き、その後の米国経済は回復の途をたどっていきます。

【図表1】オイルショック前後の米国の実効FF金利・物価上昇率・GDP成長率

(注)物価上昇率、GDP成長率は暦年。実効FF金利は年平均。

(「ECONOMIC RESEARCH」(セントルイス連銀)各種データを基にオンアド作成 )

このように、オイルショックの際には、一時的なマイナス成長に陥ることもありましたが、FRBは物価安定化の舵取りに成功し、長期の景気後退を防いだのです。

このことから、このようなショック時でも、その後の景気回復の恩恵を受けるためには、資産を売却せず継続保有することが重要といえます。

景気循環によって投資資産はどう動くか

過去の歴史を振り返ると、景気が過熱しすぎるとブレーキをかけ、冷え込むと刺激する金融政策が繰り返し行われ、景気は循環してきました。【図表2】のように、景気循環に伴って債券・株式の値動きも循環していくことを念頭に置いておけば、焦って資産を売却する必要はないことがわかります。

【図表2】景気循環と金融政策のイメージ図

景気が循環するということは、必ず今回のような下落局面もやってくるということで、さらに言えば、2000年のITバブル崩壊や2008年のリーマンショックのような大きな下落局面も、長いスパンで見れば必ずやってきます。

そういった時でも、損失を最小限に抑えるためには、「想定外のリスク」を念頭に置いて運用する必要があるといえます。

「リスク」を認識する

「想定外のリスク」に備えるためには、まず「リスク」について、改めて認識する必要があります。運用の世界で「リスク(標準偏差)」とは「リターンの拡がりを表す指標」とされています。ごく簡単に言うと「投資資産の値動きの幅」のことです。説明にあたっては、平均値からのばらつきを表す「正規分布図」がよく使われます。

 

投資資産のリターンが正規分布に従うのであれば、リターンは約68%の確率で中心から-1~+1の標準偏差に収まり、約95%の確率で-2~+2の標準偏差に収まることが想定されます。

【図表3】は、「期待リターン」が7%、「リスク」が20%である投資資産の値動きを表しています。具体的には、投資資産の値動きが、約68%の確率で「-13%~27%」の範囲に収まり、約95%の確率で「-33%~47%」の範囲に収まるということです。

【図表3】値動きのイメージ(期待リターン7%・リスク20%の場合)

安定的な資産運用を継続するには

投資資産を守る為には、「想定外のリスク」も視野に入れ、下記3点に注意して運用しましょう。

①「目的や使用時期に合わせて運用を管理」

「数年以内に使う予定のお金は低リスク資産」「当面使わないお金は中~高リスク資産」というように、資金使途・使用時期に合わせて運用を管理する。

②「分散投資」

資産分散・地域分散・銘柄分散・投資時期の分散を行うことで、資産全体のリスクの軽減が期待できる。

③「短期間で儲けようとしない」

マーケットが不安定な時にリスクの高い資産へ投資をすることや、レバレッジを掛けてリスクを高める投資を行うなどの投機的な運用は、大きな損失に繋がる可能性があるため、安定的に運用したい資産では控える。

まとめ

過去の歴史を振り返ると、好景気・不景気は循環してきました。投資資産は景気循環に連動して価格が変動する為、今年のようなマーケット環境でも、中長期的にみれば資産運用の好機と言えるかもしれません。ただし、大切な資産を防衛するためにも、本稿で触れた「想定外のリスク」は常に頭の片隅に置いておいてください。

「目的や使用時期に合わせて運用を管理」「分散投資」「短期間で儲けようとしない」を意識して、出来る限り損失を抑えられるような運用を心掛けていれば、マーケットが急落する局面でも、慌てて資産を売却してしまうことはなくなるはずです。

 

本稿が、皆さまが今後の運用を考えられるうえでの一助になれば幸いです。

ご留意事項

本稿は、如何なる意味におきましても、将来の成果を示唆または保証するものではございません。最終決定は、ご自身の判断で行ってください。

本稿は2022年10月時点の情報に基づいて執筆しております。

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