「真の安心」を手に入れるための生命保険見直し(前編)
~まずは自分に必要な保障額の目安を知る~
皆さんは生命保険を見直されたことはありますか。ご自身に万が一のことがあった際に、遺されたご家族の生活を守るのが生命保険の役割ですから、ライフステージの進行やご家族構成の変化に合わせて必要な保障額も変わっていきます。
ただ、多くの方は「必要な保障額の目安の出し方」や「どんな保険で備えるべきなのか」といった点に疑問を感じられているのではないでしょうか。
今回は前編・後編の2本立てとし、前編では「自分に必要な保障額の目安を知る」、後編では「保険の種類と特徴を知り適切に備える」をテーマにお話していこうと思います。
必要保障額の目安
必要保障額の目安を確認する方法は、実はとてもシンプルです。【図表1】に示した通り、現状の資産と遺族の収入で、遺族の生活に必要な支出をまかなえるかを確認します。支出をまかなえていない場合(現状の資産+収入<支出)は、加入済みの保険の保険金額を増やしたり、新たな保険に加入したりして備える必要があると言えます。
図表1|必要保障額算出のイメージ

必要保障額の計算例
家族構成やライフプランは百人百様ですから、「〇〇歳代の必要保障額は〇〇万円」と画一的に言うことはできません。
そのため、ご自身の状況に合わせて必要保障額を計算することになるのですが、ここが皆さま悩まれるポイントだと思います。重要なのは1つ1つの収入・支出項目と金額を大まかに把握することです。
収入については、「生命保険金」は保険証券を見ることで、「死亡退職金」は勤務先に問い合わせることで確認できます。「遺族年金」は、日本年金機構の遺族年金ガイドに計算方法等が分かりやすくまとめられていますし、計算に使うご自身の年金情報はねんきんネットで簡単に確認することができます。
支出については、「生活費」などの毎月生じる費用は月額から年額を計算し、保障期間分(遺された配偶者の平均余命などが一般的です)を計算します。「住居費」は、持ち家か賃貸かで大きく異なってきます。持ち家の場合、住宅ローンは通常、団体信用生命保険で完済されるため、固定資産税等の維持費のみを勘案します。賃貸の場合は、家賃の年額を保障期間分計算することになります。「お子様の教育費」など対象の期間のみ生じる費用は、その期間分を勘案します。
また、最低限の支出で計算するのか、レジャー費用(趣味や家族旅行等)等を含めた余裕のある支出とするのかで金額は大きく変わってきます。
以下図表は仮定の条件で必要保障額を計算したものです。【図表2】は40歳の夫婦で小学生のお子様が2人いらっしゃり、必要保障額に対して保険金額が不足している例です。【図表3】はお子様が独立した50代夫婦で、必要保障額に対して保険金額が過大な例です。どちらも保険金額3,000万円の生命保険に加入していますが、その必要性はライフステージ等によって変わってくることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
図表2|必要保障額に対して保険金額が不足している例
必要保障額算出の条件
<家族構成>
夫40歳 妻40歳(専業主婦) お子様12歳 お子様10歳
<生活の状況>
持ち家(マンション:固定資産税20万円/年)
年収800万円
生活費24万円/月
住居費11万円/月(ローン返済8万円+修繕積立金・管理費3万円)
現状の金融資産 500万円

<計算根拠>
・妻88歳までの期間で必要保障額を算出
・末子独立(22歳)までの13年間の生活費は現状の水準(24万円/月)
・末子独立後の生活費は現状の水準×0.5(12万円/月)
・住居費は維持費のみ計上(団信により住宅ローン全額弁済の前提)
・遺族年金は令和4年度金額を記載
図表3|必要保障額に対して保険金額が過大な例
必要保障額算出の条件
<家族構成>
夫56歳 妻53歳(専業主婦) お子様は既に独立(25歳・23歳)
<生活の状況>
持ち家(マンション:固定資産税20万円/年)
年収1,000万円
生活費24万円/月
住居費11万円/月(ローン返済8万円+修繕積立金・管理費3万円)
現状の金融資産 1,000万円

<計算根拠>
・妻88歳までの期間で必要保障額を算出
・妻の生活費は現状の水準×0.5(12万円/月)
・住居費は維持費のみ計上(団信により住宅ローン全額弁済の前提)
・遺族年金は令和4年度金額を記載
必要保障額はライフステージの進行や家族構成の変化で変わる
必要保障額は、現在を基準に計算するのが原則です。健康な方でも不慮の事故等の可能性はあり、「いつ亡くなるか」はコントロールできないからです。一方でご家族が増えたり、ライフプランが変わったりしなければ、必要保障額は年数を経るごとに減少していきます。例えば、10年後の必要保障額は、生活費10年間分は少なくなります。こうしたことから、長期間保険の見直しを行っていない方、また、直近でお子様が社会人となられた方は保障額が過大になっている可能性があり、お子様が生まれた方は逆に保障額が不足している可能性があるかもしれませんので、是非ご自身の保障内容を見直してみてください。
まとめ
前編では必要保障額の目安を知るための考え方をお伝えしました。万が一の際に、遺族にはどのような収入が見込めるのか、またどのような支出を想定しておくべきなのかについて、何となくでもイメージを持っていただけたなら幸いです。
次回は、本編の「必要保障額に対して保険金額が不足している」事例も用いながら、保険の種類と特徴についてお話していきたいと思います。【図表2】の必要保障額5,107万円の結果に「この金額を保険で備えるなら、保険料がかなり高額になるのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、同じ約5,000万円の保険金額でも、契約する保険が「終身保険」なのか「収入保障保険」なのかによって保険料は全く異なってきます。保険の種類と特徴を知れば、ご自身に必要な保障に対して合理的な備えができますので、是非この機会に生命保険についての理解を深めましょう。
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本稿は2022年9月時点の情報に基づいて執筆しております。
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