意外と知らない!?債券の仕組み

「預金に置いても増えないし...」近年の低金利環境でよくあるお悩みです。実際「もう少し増えてほしいけど、資産運用でマイナスになるのは怖いなぁ」と考えられている方は多いでしょう。
そんな方に一度検討していただきたいのが債券投資です。一般的に、債券は株式と比較してリスクが低い資産とされており、資産運用初心者の方にもおススメの投資対象となっています。
本稿では、債券投資を行ううえで、理解しておくべき内容について解説していきます。
債券の特徴
債券とは、国や企業などの発行体が、必要な資金を調達する際に発行される有価証券です。投資家は定期的に決められた額の利息を受け取ることができ、満期時には額面通りの金額の払い戻しを受けられることから、比較的安定した収益を得られるのが魅力です。
また、あらかじめ満期が決まっていることから、資金計画が立てやすい資産といえます。
■ 市場金利と債券価格の関係性
債券価格は、原則的に市場金利との関係で日々変動しています。市場金利が上昇すると債券価格は下落し、市場金利が下落すると債券価格は上昇します。
なぜこのような動きになるのかは、購入した債券の利率と、その後の市場金利を比較すると、理解できます。【図表1】は市場金利と債券価格の関係性を表したものです。
例えば、利率2%で額面100円の債券Aを購入したとします(【図表1】左側)。その後、市場金利が上昇し、利率3%で額面100円の債券Bが発行されると、債券Aの価格はどうなるでしょう。【図表1】右側上段のように、債券Bの利率の方が魅力的になるため、相対的に債券Aの価格は下落するのです。
逆に、【図表1】右側下段のように、利率1%の債券Cが発行されると、債券Aの利率の方が魅力的になるため、同様の考えで債券Aの価格は上昇するのです。
【図表1】市場金利と債券価格の関係性

※この図表はあくまでイメージです。市場金利と債券価格の関係性を、架空の利率と債券価格を使用して表している為、実際の値動きとは異なります。市場金利と債券価格以外の価格変動要因は考慮しておりません。
ポイントは「利回り」と「格付」
債券投資では、実質的な投資成果を表す「利回り」と発行体の信用度を表す「格付」に注目して銘柄を選ぶことが重要です。
■ 利回り
「利回り」とは、投資元本に対する収益の割合を指します。この場合の収益とは、「利息と売却損益」もしくは「利息と償還損益」をあわせたものを指します。よく混同される「利率」は、額面金額に対して毎年受け取れる「利息」の割合を表すもので、購入価格にかかわらず一定です。
利回りは【図表2】の計算式で求められます。期間や利率が同じ債券でも、【図表3】のように購入価格が異なれば、利回りは大きく変わってくるのです。
【図表2】利回りの計算式

【図表3】購入価格と利回りの関係性

※単利ベース。手数料・税金は考慮していません。
■ 格付
格付とは、専門の機関が発行体の信用力を総合的に分析し、ランク付けした指標です。発行体が利息を支払うことや、満期時に額面金額を払い戻すことは、想定通りの運用成果を上げるための前提となるため、格付については、必ず確認しておきましょう。
信用度の高いAAA(トリプルA)から信用度の低いC(シングルC)まで、アルファベットで表され、一般的にはBBB以上は「投資適格格付※」、BB以下は「投機的格付※」と言われています。
【図表4】は、格付と利回りの関係性を表したものです。
※投資適格格付:信用度が比較的良好と考えられる格付
※投機的格付:信用度が低いと考えられる格付。一般的に「ハイ・イールド債」と呼ばれる
【図表4】格付と利回りの関係性

主な債券の種類
■ 国債
発行体は日本国で、国内で最も信用度の高い債券の一つです。
■ 地方債
都道府県や市などの地方公共団体が発行する債券です。信用度は高く、国債の流通利回りに一定程度、上乗せした利率で発行されます。
2023年2月発行分の一般地方債の10年債を例にとると、10年国債の利回りに0.23~0.25%程度上乗せされた利率が適用されています。
発行条件や発行予定などは、総務省のHPを通じて確認できます。
■ 事業債
企業(事業会社)が発行する債券です。事業債についても、国債の流通利回りを基準に利率が決定されることが一般的です(発行体の信用度により上乗せ利率は異なります)。一般的に国債・地方債に比べれば信用度は劣るため、相対的に利率は高くなっています。
■ 外国債券
発行体、通貨、発行場所のいずれかが外国に属する債券のことをいいます。
外貨建が主になり、通貨を発行している国の金利を反映するため、国内債券より利率の高い外国債券が多く存在します。中でも新興国債券は信用度が低い分、利率が高く設定されています。
なお、新興国債券は先進国債券に比べて、為替変動リスク・カントリーリスクが高いため、大きな相場変動で多額の損失が発生したり、取引自体ができなくなったりする可能性があります。
まとめ
債券はリスクを抑えながら、預金以上の利回りを受けることができ、運用初心者の方でも始めやすい投資対象です。
債券を選ぶ際は「利回り」と「格付」をしっかり確認することが重要です。発行体によっては、条件やリスクも大きく変わってくるため、それらを十分認識したうえで、運用の選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
ご留意事項
債券投資には以下のリスクが伴いますので、ご認識のうえ、ご投資の判断はご自身で行ってください。
・発行体の破綻により、元本や利息が支払われない信用リスク
・市場金利が変動すると、債券価格も変動する金利変動リスク
・外貨建債券の場合、為替差損が生じる可能性がある為替変動リスク
・取引量が少ないと、売却しようと思ったタイミングや条件で売却できない流動性リスク
・投資している国や地域の政治・経済状況によって、価格が変動するカントリーリスク
本稿は、如何なる意味におきましても、将来の成果を示唆または保証するものではございません。最終決定は、ご自身の判断で行ってください。
本稿は2023年1月時点の情報に基づいて執筆しております。
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