住宅購入に頭金は必要なのか?
~頭金を準備する場合としない場合のメリットをそれぞれ整理~
「遅かれ早かれマイホームは欲しいけど、とりあえず頭金が貯まってからにしよう」こうした考えの方は、一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
はじめに頭金を準備すれば、その分だけ住宅ローンの借入額が少なくなり、その後の返済も楽になります。しかし、頭金がなくても住宅ローンを組むことはできます。頭金を準備する期間を待たずに住宅を購入するメリットはあるのでしょうか。
本稿では、両者のメリットについて整理していきたいと思います。
頭金を準備してから住宅を購入するメリット
住宅購入における頭金は、一般的に住宅購入費用の10~20%前後とされています。住宅金融支援機構の「2021年度 フラット35利用者調査」によれば、土地付き注文住宅購入の合計所要資金は全国平均で4,455万円でした。このうち、頭金は412万円となっています。つまり、土地付き注文住宅を購入する人は、物件価格の10%弱の頭金を用意しているということになります。
頭金は、必ず準備しなければいけないものではありません。しかし、計画的に準備しておくことで、いくつかのメリットがあります。
<毎月の返済額が減り、家計収支が安定する>
頭金を準備する最大のメリットは、住宅ローンの借入額が減り、その分だけ毎月の返済額を抑えられることです。毎月の返済額が少なければ、住宅ローン返済開始後の収支の変化にも対応しやすく、家計が圧迫されるリスクを低くすることが出来るでしょう。
当然、金利負担も抑えられます。住宅ローンは長期間で返済するローンなので、比較的短期間で返済する自動車ローン等に比べて、頭金の有無による金利負担の違いが大きいのです。
<ローン審査に通りやすくなる>
頭金が無い場合と比べて返済負担率※が下がるため、ローン審査に通りやすくなります。審査を行う金融機関からすれば、頭金を準備できたという実績は、借入人の家計収支が健全であるという証明とも取れるため(贈与等の場合もありますが)、審査上の信用度が増すのです。
ただし、返済負担率はあくまで返済能力の目安であり、適切な住宅ローン返済額を検討するにあたっては、実際の家計収支を踏まえることが重要です。
※税込年収に対する年間ローン返済額の割合。金融機関の審査等で利用される。計算式は「年間ローン返済額÷税込年収×100」。
<金利優遇を受けられる場合がある>
金融機関によっては、頭金を一定割合準備することで優遇金利を受けられるところもあります。ちなみに、住宅金融支援機構のフラット35では住宅購入費用に占めるローン金額の割合が9割以下(頭金を1割以上準備)の場合は、適用金利が一定程度引き下げられます。
頭金を準備する期間を待たずに住宅を購入するメリット
このように、頭金を準備することにはメリットがありますが、頭金を準備する期間を待たずに住宅を購入することが必ずしも悪いわけではありません。
例えば、人気が高いエリア等で、頭金が用意できていないことを理由に購入を先延ばしにすると、先に契約されてしまい、後悔することにもなりかねません。
もし頭金が用意できていないという理由で住宅購入を迷っている方は、是非これからご紹介する観点についてもご確認いただけたらと思います。
<完済年齢が早まる>
頭金を準備する期間を待たずに住宅ローンを組めば、完済年齢が早くなります。
例えば、一定の頭金を準備して40歳で35年返済の住宅ローンを借りるとすれば、契約上の完済年齢は75歳になります。現在は70~80歳で完済という住宅ローン契約がめずらしくないとはいえ、定年退職後、多くの方は収入が減少することが想定され、住宅ローンが残っていると家計を圧迫する可能性があります。毎月預貯金を取り崩すことになると、精神的な負荷も大きいでしょう。
理想は定年退職までに、最悪でも再雇用等で働いている間には完済のめどをつけたいところです。
<家賃が掛け捨てにならずに住宅ローンの返済に充てられる>
住宅情報誌等が実施するアンケートを見てみると「家賃が掛け捨てになってもったいない」は、住宅購入に踏み切る理由として常に上位に入っています。「持ち家は必ずほしい」という方にとっては、同じ住居費用でも、掛け捨てとなっていた家賃が、住宅ローンの返済に充てられるだけでも大きな違いといえるでしょう。
<団体信用生命保険に加入できる>
意外と認識されていないのは、住宅ローンを組むと団体信用生命保険(以下、「団信」)に加入できる※というメリットです。
極論にはなりますが、人の生死はコントロールできないため、万が一のことがあった際に、家族に住居を遺せるかどうかは大きな違いとなります。仮に世帯の収入の柱が亡くなった方であった場合、家族がマイホームに住む夢は遠のくかもしれません。
最近では、死亡と高度障害を保障する一般的な団信に加えて、「がん」や「三大疾病」等の保障が付保されているものもあるため、こうしたリスクに備えられる団信へ加入できることは大きなメリットです。
※民間金融機関の住宅ローンは団信への加入が必須ですが、住宅金融支援機構のフラット35は団信への加入が必須ではありません
<住宅ローン控除の活用で返済負担が緩和される>
住宅ローン控除は、制度上決められた限度額の範囲内で、年末の住宅ローン残高×0.7%の税額控除を受けられます。
現在は、変動金利であれば1%を下回るのが普通になっているので、住宅ローン控除期間中(現行制度では10年間もしくは13年間)は、実質的に金利負担が無い状況でローンを返済できるのが大きなメリットといえるでしょう。
繰上返済を視野に入れる
住宅ローン返済開始後に一部繰上返済を行い、月々の返済額や、金利負担を軽減することを視野に入れているなら、頭金なしで家を購入するという選択肢もあり得ます。
現在の低金利環境下で住宅ローンを組み、月々の返済額が抑えられた分余った資金を別途積立てておいて、住宅ローン控除期間が終了したときに一部繰上返済を行うことでも、頭金を準備するのと同様の効果が得られるということです。
まとめ
本稿で記載した内容は、ほとんどが経済的なメリットの比較についてです。住宅購入のタイミングは、結婚やお子さまの成長など、ライフステージの進行度合いやライフプランも重要な要素であり、経済的なメリットだけで一概に判断することはできません。
ご紹介した頭金を準備するメリット、頭金を準備する期間を待たずに住宅ローンを組むメリットそれぞれを認識いただくと、ライフプランニングの幅が広がりますので、参考としていただければと思います。
ご留意事項
本稿は2023年2月時点の情報に基づいて執筆しております。
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