素人が陥りがちな株式運用の罠
~ 証券マンが語る「成功した人を見たことがない運用方法」 ~
証券会社で15年以上営業を経験した上で、やって欲しくない株式運用の方法があります。
それは、「個別株の利益が出たら売却、損をしたら戻るまで保有」という運用の仕方です。
勿論、個人投資家の全てのパフォーマンスを知っている訳ではないので断定はできませんが、少なからず私の経験上では、「利益がでたら売却、損をしたら保有」を繰り返すと、大きな含み損を抱えてしまう可能性が高いと考えております。
陥りがちな非合理的な投資行動
なぜ「利益がでたら売却、損をしたら保有」を繰り返すと、大きな含み損を抱えてしまう可能性が高いのか?
株式は基本、将来の見通しがポジティブだと上昇し、ネガティブだと下落する傾向があります。
「利益が出たら売却、損をしたら戻るまで保有」は、言い換えると「ポジティブを売却、ネガティブを保有」を繰り返していることになります。その結果、保有している個別銘柄の多くがネガティブな要素を含んだものとなり、時間と共に損失が拡大していく状態に陥るのです。
文章として読んでみると、「そんなことは当たり前でしょ!やるわけないじゃん。」と思われる方も多いと思いますが、「利益は確定しやすく、損は確定しづらい」ことは心理的に当然であり、実際によくある株式投資の失敗例です。因みに、証券業界では含み損を抱えた銘柄を保有し続けることを、「塩漬けにする」と表現します。この非合理的な投資行動については、2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏とエイモス・トベルスキー氏によって提唱されたプロスペクト理論※でも説明されております。
※ プロスペクト理論:投資家は収益よりも損失の方に敏感に反応し、収益が出ている場合は損失回避的な利益確定に走りやすい。一方、損失が出ている場合はそれを取り戻そうとしてより大きなリスクを取るような投資判断を行いやすいとされる。
話題の銘柄には注意せよ
特に、新聞や雑誌に一時的に取り上げられる「話題の銘柄」や、新規上場直後で乱高下を繰り返している銘柄に投資を行い、短期間で利益をあげようとしている方は要注意です。そういった銘柄の多くが時間とともに人気がなくなり株価も急落するケースがあります。
過去に担当させていただいたお客様で、いわゆるプロの投資家の方々は、中長期で保有する銘柄と、短期で売買する銘柄は明確に分けて運用をされています。中長期で保有する銘柄に関しては、外部環境や決算発表の内容を基に売買の意思決定を行うのに対し、短期で売買する銘柄に関しては、購入前に利益確定と損切のラインを定め、それを機械的に実行されていました。
株式投資をこれから始めようとする方々は、「短期で利益を稼ぎたい」と考えている人が多いように感じます。その多くが、「短期」で売買するはずであったのに、含み損になった銘柄を売却できずに保有し続ける傾向があります。特に、「話題の銘柄」で大きな含み損を抱えるケースをたくさんみてきました。株式投資をする上で、「損切」の決断は「利益確定」よりも重要であると言えます。
成功の確率を高める合理的な投資行動とは
そうならないためにはどうすればよいか?
デイトレーダーを目指す方は別として、これから将来への資産形成を検討される方には、そもそも売買を頻繁に行わない長期分散投資をお勧めします。
なぜならば、投資を始めようと考える方の多くが、「預金よりは良い運用を行いたいが、リスクはあまり取りたくない」と考えており、この考えを実現する方法としては、長期分散投資が適しているからです。そもそも短期間で使う予定がある資金は、運用するべきではありません。
本当に?と思われる方は、是非、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のHP※で分散投資の効果を確認してみてください。
約20年間で平均リターンが3.8%の運用について、毎年のパフォーマンスからポートフォリオまで詳しく説明されております。
※ 本URL(https://www.gpif.go.jp/) よりGPIFのHPへ遷移いたします。
投資を始めてみたが、個別銘柄で損を抱えて運用をやめてしまった方はたくさんいらっしゃると思います。
来年からは、資産所得倍増プランに向けて新NISAがスタートすることもあり、投資への新たなスタートを切るきっかけの年として、長期分散投資に小額からでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ご留意事項
本稿は、如何なる意味におきましても、将来の成果を示唆または保証するものではございません。
最終決定は、ご自身の判断で行ってください。
本稿は2023年4月時点の情報に基づいて執筆しております。
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