確定申告って必要?

~会社員が知っておきたい制度概要と手続き~
確定申告と書かれたイメージ画像

確定申告は、税金を正しく計算し、納付するうえで重要な手続きです。普段はお勤め先の年末調整だけで済んでいる会社員の方々にはなじみが薄いかもしれませんが、もしかしたら確定申告によって税金が戻ってくるかもしれません。最近では、ネットで申告ができるようになっており、ずいぶん便利になりました。
本稿では、確定申告とは何か、会社員で対象となる人はどんな人か、実際の手続きまでを分かりやすく説明します。

確定申告とは

確定申告は、個人の1年間の収入と必要経費をもとに所得を算出し、その所得に応じて納めるべき税額を計算して国に申告する手続きです。この手続きを経ることにより、自分の正確な所得と税額が計算され、その金額を納付することができます。

対象はどんな人

通常、会社員の所得税は、勤務先が毎月の給与やボーナスから源泉徴収します。そして、通常12月分の給与支払いの際に、源泉徴収した年間合計額との差額を清算(年末調整)して納税を完了させます。そのため、基本的には確定申告の手続きは不要となることがほとんどです。
会社員で確定申告が必要なのは、特定の条件や状況に該当する場合です。ここでは、確定申告が必要となる典型的な例を紹介します。

  • (1)

    給与以外の所得(副業収入など)が一定額以上ある場合
    年間20万円を超える給与以外の所得がある場合、確定申告が必要です。
    これには、オンラインでの販売活動(フリマサイトなど)や不動産収入や株式などの投資による収益、仮想通貨取引の収益などが含まれます。

  • (2)

    給与収入が2000万円を超える場合

  • (3)

    特定の控除(所得控除・税額控除)を受ける場合
    医療費控除(所得控除)を受ける場合、住宅ローン控除(税額控除)を受ける初年度など、通常の源泉徴収では適用されない控除を受けるためには確定申告が必要です。

確定申告をした方がいい人

確定申告の義務はないものの、以下のような方は確定申告を行うと税金が安くなるケースがあります。

  • (1)

    医療費控除・セルフメディケーション税制が適用される方

  • (2)

    ふるさと納税をした方

  • (3)

    上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除をしたい方

  • (1)

    医療費控除・セルフメディケーション税制が適用される方
    「医療費控除」は、1年間で支払った医療費が一定額を超えるときは、その額をもとに計算される金額の所得控除を受けられる制度です。また、「セルフメディケーション税制」は、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組(※1)を行う個人が、スイッチOTC医薬品(※2)の購入をした場合に適用できる医療費控除の特例です。
    通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は併用適用ができませんので、ご自身にあった制度を選択する必要があります。
    ※1:特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診
    ※2:要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品
    (類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外のものを除く。)

  • 医療費控除額(最高200万円)
    医療費控除額 =医療費総額-保険金等で補填される金額-10万円
    (もしくは、総所得金額等×5%の少ない金額)

  • セルフメディケーション税制
    控除額(最高8万8千円)
    =年中に支払った購入費の総額(最高10万円)-保険金等で補填される金額-1万2千円

  • (2)

    ふるさと納税をした方
    「ふるさと納税」は、寄附金額の2,000円を超えた全額について、所得税及び住民税から控除されます。確定申告もしくは「ふるさと納税ワンストップ特例」という2種類の申告方法があり、以下のような違いがあります。

  • 確定申告所得税の控除(還付)が受けられ、残額は寄附翌年の6月以降の住民税から減額される
    ふるさと納税
    ワンストップ特例
    ふるさと納税先が5団体以内である場合に限り活用可能で、確定申告が不要。所得税の控除(還付)はなく、全額が寄附翌年の住民税から減額される
    【図表1】ふるさと納税の申告方法による控除の違い
    所得税の控除住民税の控除
    確定申告
    ワンストップ特例×
  • (3)

    上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除をしたい方
    上場株式等を譲渡したことにより損失が出た場合、確定申告をすることにより、その年分の上場株式等の配当や分配金と損益通算することができます。
    さらに、損益通算しても控除しきれない損失の金額については、その年分の翌年以降3年間にわたり、確定申告により、上場株式等の譲渡所得金額や配当所得の金額から繰越控除することができます。

所得税の計算方法

個人が1年間(1/1~12/31)に得た「所得金額」(=収入 ― 経費等)から「所得控除額」を差し引いた金額に対して所得税額を計算します。
流れは以下のようになります。

  • (1)

    「各種所得」の算出
    まず、一年間に得たすべての収入を10種類に分類し、種類ごとに「所得金額」を求めます。
    会社員であれば、給与収入に応じた給与所得控除などを差し引いて給与所得を算出します。

  • (2)

    「損益通算」の適用・「課税標準」の算出
    その際に、その年の一定の損失または前年以前3年以内の損失と今年の所得(利益)を相殺し、税額計算の基礎となる金額である「課税標準」を求めます。

  • (3)

    「所得控除」の適用・「課税所得」の算出
    「課税標準」から基礎控除、社会保険料控除、医療費控除などの各種控除を差し引き、「課税所得金額」を算出します。

  • (4)

    税額の算出
    「課税所得金額」ごとにそれぞれの税率を適用して税額を求めます。

  • (5)

    「税額控除」の適用・「納税額」の算出
    最後に、算出した所得税額から直接差し引くことができる「税額控除」を適用し、納税額を算出します。住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や配当控除、外国税額控除などがあります。

  • 【図表2】課税所得の計算方法
    課税標準=所得金額 ― その年の損失 または 前年以前3年以内の損失
    課税所得金額=課税標準 ― 各種控除
    納税額=課税所得 × 課税所得に応じた税率 ― 税額控除

    ※ 総合課税の対象となる長期譲渡所得と一時所得は、所得金額を2分の1した後の金額を前年以前3年以内の損失と相殺する

確定申告の手順

確定申告を行う際には、必要な書類を準備し、システムもしくは手書きで確定申告書を作成し、税務署に提出する必要があります。

■ 作成方法
1. スマホやPCを使い、確定申告作成コーナー(国税庁)などのシステムで作成
2. 確申告書の用紙を使い、手書きで作成
※ ほかには、市販の確定申告ソフトを使用する、専門家に依頼するなどの方法もあります。

国税庁HPの確定申告作成コーナーを活用すれば、簡単に確定申告書を作成できます。
一般的な給与所得者であれば、会社から前年末に支給される源泉徴収票をもとに、指定された項目を入力するだけで所得や控除額が自動計算されますので、手間が省けます。

■ 提出方法
1. e-Taxで申告(マイナンバーカード、もしくは事前に税務署で交付を受けたID・パスワードが必要)
2. 郵便また信書便で税務署等に送付
3. 住所地等の所轄税務署の窓口に持参

e-Taxについては、所得税等の確定申告時期であれば、土日祝日を含む全日で24時間提出が可能です。

初めて確定申告をされる際には、国税庁のサイトなどで事前に情報を収集し、必要な書類を整理しておくことが重要です。

まとめ

確定申告と聞くと煩雑なイメージを持たれるかもしれませんが、手続きについて正しく理解し、早めに準備をすれば、それほど難しいものではありません。最近はe-Tax(電子申告)を活用することで、以前よりも簡単に間違いなく手続きをすることができるようになりました。本稿が確定申告をより理解し、効果的に手続きを進めるための一助になれば幸いです。

ご留意事項

本稿は、如何なる意味におきましても、将来の成果を示唆または保証するものではございません。最終決定は、ご自身の判断で行ってください。
記載内容、税制等については、2023年12月現在の情報に基づいて作成しております。今後、事前の連絡なしに変更される場合があります。
また、本稿の一切の権利はオンアドに属しております。事前にオンアドの承諾を得ることなく、複製・転載・転送等の行為は固くお断りいたします。

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