30代・40代必見!確定拠出年金の上手な増やし方(前編)

~自分にとってのメリットを理解し、運用の中身を確認する~
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確定拠出年金(以下DC)とは、毎月の拠出額が確定している一方、受取額はご自身が選んだ投資先の運用成果によって変わる年金です。要するに、「老後資金は自分自身でしっかり運用して増やしていきましょう」という制度です。
DCには2種類あり、掛金について企業が出し手の「企業型DC」、個人が出し手の「個人型DC」(以下iDeCo)に分かれています。加入者数は年々増加を続け、2023年3月末時点で、企業型、iDeCoを合わせて約1,095万人を超えています。
このように、加入者は順調に増え続けていますが、必ずしも加入者全員が有効に活用できているとはいえないのが現状です。「投資先は加入当時のまま」「企業型DCのサイトにログインしたことがない」といった方も多いのではないでしょうか。
これから、DCに関して「前編」「後編」に分けてご説明していきます。
今回は「前編」として、DCのメリットを改めておさらいしたうえで、みなさんは実際にどのような運用をしているのか、次回は「後編」として、投資先選定のポイントについて基礎的な面からより実践的な例まで丁寧にご説明したいと思います。

DCのメリットをおさらい

まずDCのメリットをおさらいします。
ご存じの方も多いと思いますが、DCには下記3つの税制メリットがあります。

「拠出額が所得控除…拠出額を所得から控除できます。(所得を繰延べ)

「運用益は非課税」…運用益には税金が課せられません。

「受取時に控除」…受取時に「退職所得控除」「公的年金等控除」が利用できます。

※企業型DCの場合、マッチング拠出で拠出した金額が所得控除の対象

上記メリットの中でも②の税制メリットに関しては積極的にリターンを追求した運用をしないと享受できません。言い換えると「DCをうまく使えば、資産も増え税制メリットも最大限享受できる」ということになるのです。
詳しくお話ししていきましょう。DCは、毎月一定の金額で投資商品を買い続けることができます。ドルコスト平均法と呼ばれ、商品の価格が「高い時に買いすぎる」「安い時に買いそびれる」といったことを防げます。
DCのこの仕組みをうまく活用し、長期・積立・分散投資をすれば、元本割れのリスクがある資産でもリスクが低減され、大きな運用益を得られる可能性が高まります。その点で、DCは最適な投資方法といえます。

【図表1】長期積立分散投資の効果

① 長期・積立・分散投資の効果(実績)

長期・積立・分散投資の効果(実績)グラフ

(注)各計数は、毎年同額を投資した場合の各年末時点での累積リターン。株式は、各国の代表的な株価指数を基に、市場規模等に応じ各国のウェイトをかけたもの。債券は、各国の国債を基に、市場規模等に応じ各国のウェイトをかけたもの。
(資料) Bloombergより、金融庁作成

「高校生のための金融リテラシー講座」(金融庁)より一部抜粋


② 国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率の分布

国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率の分布図

(∗)1989年以降、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積立投資を行い、5年間と20年間それぞれ保有した場合についての年間収益率と運用結果を計算したもの(金融庁作成)

「高校生のための金融リテラシー講座」(金融庁)より一部抜粋

さらに、DCを最大限活用するには「リターンが大きく見込める資産に投資すること」が必要だと言えます。

みんなは何に投資している?

ところでみなさんのDCの資産配分はどうなっていますか?

【図表2】は企業型DCとiDeCoの資産配分を比較したグラフです。特徴的なのは、いずれの年代においても、iDeCoでは株式の比率が多く、元本確保型(預貯金・保険)が少なくなっていることです。一方、企業型DCは逆で、元本確保型の比率が高く、株式が低いという結果になっています。

【図表2】企業型DCとiDeCoの年代別運用商品 (2023年3月末)

企業型DCとiDeCoの年代別運用商品 (2023年3月末)の図。

「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」(企業年金連合会)をもとにオンアド作成

iDeCoは自ら口座開設し、運用を始めている為、若い世代ほど積極的にリスク資産を保有し、投資行動としては理にかなった動きになっていると考えられます。
一方、企業型DCにおいては、約6割の加入者は自身で商品を選ばなければなりません。さらに、残りの4割弱の加入者の会社においては、何も商品を選ばなかった際のデフォルト商品が決まっているものの、その大半を元本確保型が占めています。(※1)
そういったことから、加入時は「何に投資していいか分からない」「株式は損するかもしれないので預金においておこう」と考え、iDeCoと比較するとリスク資産が少なくなっているのかもしれません。
【図表3】は、全世界株式や日経平均に対して、長期・積立・分散投資を行った場合のシミュレーション例です。必ずしもこのような結果になる訳ではありませんが、ご自身が何に投資しているか、今一度資産内容を確認してみる価値はあると思います。

【図表3】長期・積立・分散投資の効果(株式)

「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」(金融庁)より一部抜粋 

ご自身の運用状況を確認しましょう!

企業型DCを改めて確認すると、投資資産の半分が預金のままになっていたなんてこともあります。退職前になって「あの時見てしっかり運用しておけば・・・」と後悔しない為にもすぐに確認してみましょう。
お勤めの会社によって記録関連運営管理機関(※2)は違いますが、皆様のもとには定期的に加入者番号の記載された運用報告が届いているはずです。加入者番号を使い、各社HPからログインし、運用状況の確認、資産配分の変更等ができます。もし、確認方法が分からない場合は、会社の担当者の方へ確認して下さい。

まとめ

DCは税制メリット、運用成果の恩恵も受けられ、使い方次第で効率的に年金を増やすことができる制度です。しかし、運用の中身を気にせず加入当時のままだと、せっかくの制度も実は有効に活用できていなかったということになりかねません。今一度、ご自身のDCサイトを確認頂くことをお勧めします。
後編では、「投資先に何を選んだら良いか」を中心にお伝えします。


※1 指定運用方法の69.7%が元本確保型商品、29.5%がバランス型投資信託(指定運用方法の採用企業)
「2021(令和3)年度決算 確定拠出年金実態調査結果」(企業年金連合会)

※2 【記録関連運営管理機関4社】
日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社(JIS&T)
日本レコード・キーピング・ネットワーク株式会社(NRK)
SBIベネフィット・システムズ株式会社
損保ジャパンDC証券株式会社
(金融機関の管理機関でも確認が可能)

ご留意事項

本稿は、如何なる意味におきましても、将来の成果を示唆または保証するものではございません。最終決定は、ご自身の判断で行ってください。
本稿は2024年2月時点の情報に基づいて執筆しております。
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